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川尻の家

House in Kawajiri

接ぎの改修

小さなまちの駅前通りに建つ古い住宅の改修計画です。
この住宅を引き継いだ建築主は遠方で生活されているため、数年間空き家状態となっていました。
当初は売却することも考えましたが、生まれ育った故郷との関わりを大切にしたいとの思いから改修することを思い立ちました。
敷地内には通りに面してぎゅうぎゅう詰めに鉄筋コンクリート造のはなれが、奥には木造母屋が建っており、狭い隙間を通って母屋に入って行くという状況でした。
全体としては家族の成長に伴い、その都度必要に応じて様々な増築や改修を繰り返してきた印象を受けました。
建築主からの要望としては現在の生活拠点とは距離があるため、当面は別荘として利用するが将来的には自分たちの終の棲家、カフェやレンタルスペースなどとしても貸し出すことが可能な自由度を持ちたいということでした。
私たちが提案したのは、はなれの減築と併せて母屋の一部を解体し、新しく建物の幅一杯の土間空間を設けるということ、過去の改修による不要な壁を取り除き伸びやかな平面構成とすること、天井の一部を取り外し縦方向への抜けを作るというものです。
減築によって母屋前に生まれるポケットスペースは風通しの良い外部環境を作り出すと同時に駐車やイベントのスペースとなり、深い庇を持つ土間玄関は日射をコントロールしながら比較的多い人通りや車の往来を気にせずに静かに過ごすことが出来る緩衝帯として機能します。
壁を撤去したことにより水平方向への広がりが生まれた空間は、既存の柱や差鴨居によって間延びすることなく、様々な住まい方や使い方を受け入れます。
また、新たに生まれた吹抜けは既設の小屋裏窓から広間へとやわらかい光を落とし、見上げると荒々しい構造材や壁が住宅の歴史を感じさせ、大きな空間となった広間に適度な気積を与え開放感をもたらしています。
新しい部分、古い部分を対比させるのではなく、それぞれが新たに生み出された全体の一部となりながら自由に伸び伸びと過ごすことが出来るおおらかな住宅となればと考えました。

設計監理 花本大作建築設計事務所
施工 株式会社 三四五屋
撮影 益永研司写真事務所
設計期間 2018年9月~2019年5月
工事期間 2019年6月~2020年9月
主要用途 別荘
規模 地上2階建
構造 木造
敷地面積 250.43㎡
建築面積 126.53㎡
延床面積 141.69㎡
【受 賞】
  • ◎令和4年度 呉市美しい街づくり賞リノベーション部門 受賞
【メディア】

ArchDaily

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